多種多様な経歴や経験を持つメンバーが在籍するバンダイナムコオンライン。
「それぞれの知見を共有すれば、より魅力的なコンテンツをつくることができるはず」……
そんな思いから自ら手を挙げ、自由参加のオンライン勉強会「レベルと背景のゆる勉強会」を企画・開催している背景アーティストの竹内に、その経緯や工夫について聞きました。

−まずは竹内さんの経歴について教えてください。

大学卒業後、2017年にバンダイナムコオンラインに新卒入社しました。
現在は背景アーティストとして開発中のプロジェクトに携わっています。

−そんな中で主催されている「レベルと背景のゆる勉強会」について、開催に至った経緯を教えてください。

レベルプランナーと背景アーティスト、それぞれの知見を共有する場をつくりたかったというのが一番の目的です。
バンダイナムコオンラインには、多種多様な経験を積んできたメンバーが多くいますが、メンバーそれぞれが積み上げてきたその数年~数十年の経験を、普段はなかなか話す機会がありませんでした。
ゲーム開発の一つ一つの過程には、色々な工夫やアプローチがあります。
それらを共有し合うことが個々の力になり、ひいては全体の力を底上げしていけると考えました。
自分自身にとっても、皆さんの貴重な話が聞けてお得だなと。

サブ目的として、人前で発表することにあまり慣れてないメンバーにとって、いい練習の場にしたいという思いも込めています。

−企画から開催までどれくらいの時間がかかったのでしょうか。

「こういう会をやりたいです」と提案したら、あっさり「いいじゃん」と言ってもらえて。
そこから2週間ほどで開催することができました。
一人ひとりの挑戦を前向きに応援してくれるところがバンダイナムコオンラインならではの風土だと思っています。

 −では、具体的に会の内容を教えてください。

主にレベルデザイナーは背景アーティスト向けに、背景アーティストはレベルデザイナー向けに、自身の専門分野について専門外の方も理解できるようにわかりやすく説明するというもので、オンライン開催・自由参加形式をとっています。

例えば、レベルデザイナーが「グレーボックス」と呼ばれる見た目を仕上げる前のシンプルな形状の壁を置き、背景アーティストはそこに全体の雰囲気を作っていく、といった流れがあるのですが、背景アーティストはその「グレーボックス」がどういった基準で置かれているかは明確に分からなかったりします。
ある箇所に遮蔽物を置くときに、どんなことを考えているのか?
その意図や、そこに込めたちょっとした気遣いなど、「ゲームを一緒につくっている背景アーティストでも意外と気付かないようなこと」を共有しています。

これまで、「ユーザーに適切な行動を促すためのアフォーダンスの考え方」や、「背景アーティストの視点でレベルデザイナーに意識してもらえると嬉しいポイント」など、毎回様々なトピックを取り上げてきました。

−竹内さん自身が特に印象に残っている発表はありますか?

毎回とても貴重なお話を聞くことができているので、全部と言いたいところですが…ひとつ挙げるとすれば、あるシューティングゲームのヒートマップ(プレイ中のユーザーの行動を確認できるツール)を見ながら、レベルデザイナーの考え方を聞く会はとても興味深かったです。
マップ内のどこで戦闘がよく起きているかプレイヤーのスキルレベルごとに分析し、想定していた動きとあっているか見て、違っている場合は原因を分析します。
そういった話を聞くことで、「自分が携わったマップがお客様にこういう形でプレイされているんだ」と改めて実感できました。
普段の業務でマップを改修する際などにも、レベルデザイナーからの要望を、より高い解像度で理解できるようになったと感じています。
 
ちなみにこの回は、参加者アンケートで背景アーティストの方から「自分がつくったステージがどう使われているか知りたい」という要望があり、それに応えるかたちで開催しました。
できるだけ参加者の声を会の内容に反映させたいと思っているので、アンケートは毎回実施しています。

−参加者の方からの反応はいかがですか?

すでに7回開催しましたが、毎回「今後に役立てられそう」という感想をいただけています。
一度参加したメンバーが他の方に声をかけ、次の回で一緒に参加してくれたこともあり、背景アーティストやレベルデザイナー以外のセクションの方にとっても、学びのある会になっているんじゃないかと思っています。

−会の満足度を上げるために工夫していることはありますか?

メンバーに「発表したい」と思ってもらうために、発表者が話しやすい環境にすることを強く意識しています。
そこで、オンラインだとどうしてもリアクションが見えにくいので、聞いている人のコメントが発表者の画面に匿名で表示される仕組みを導入しました。
聞く人の「聞く姿勢」を大事にしたいと考えていますね。
 
参加者の方に対しても、気軽に参加してほしいという思いから、「会議感」の出るオンライン会議ツールではなく、ゲームをプレイするときによく使うDiscord上で開催しています。

−「レベルと背景のゆる勉強会」の今後の活動方針や展望はありますか?

あまり大規模な会になると意図が果たせなくなるので、なるべく「ゆるさ」や運営のシンプルさを大事にしたいです。
最終的には、仮に私がいなくなったとしても、能動的に引き継いでくれるメンバーが現れて、続いていくといいですね。
そうなれば、意義のある企画といえると思うので。
そのためにも、運営方法は全てドキュメント化して残しています。

−最後に、竹内さんから見て、バンダイナムコオンラインはどんな会社ですか?

自分の経験やスキルを共有することに前向きな方がすごく多いと思います。
普段の業務でも、部下や後輩にフィードバックする際に、単に解決策を示すだけでなく、その人にとって後につながるような教え方をしてくれます。

例えば、何か問題が発生したときに「こうしましょう」と指示するのではなく、「解決するには3パターンのやり方があって、今回の場合はこのやり方がいいよ。他の2パターンはそれぞれこういうときに使えるよ」というように教えてくれるんです。
また、たとえ自分でやった方が早いようなことでも、あえて若手メンバーがチャレンジする機会を作ってくれていると感じます。

「レベルと背景のゆる勉強会」も、経験のそう多くない私に運営をまるごとまかせてくださっていて、1つのチャレンジだと思います。

発表は持ち回り制ではなく、話してくれる人を募って運営しているので、自分の知見を積極的に共有してくださる人のおかげで、この会は成り立っています。
この会で、ベテラン・若手の枠にとらわれず知見共有できる仕組みを作った上で、私も先輩に教えていただいたことを後輩につなげていったり、自分が得たスキルを周りの人に伝えたりしながら、チームとして成長していきたいです。

−本日はありがとうございました!